はっとり浩之オフィシャルブログ

2013年3月20日

羊、追いかけたらええやん

カテゴリー: 未分類 — hattori @ 12:18 AM

地下鉄に乗ってたら、熱心に村上春樹の「羊をめぐる冒険」を読んでいる初老の男を見かけた。
50代後半ぐらいだろうか? 仕立てのよさそうなスーツに身を包んでいて、セルフレームの眼鏡の奥に知的な目を持っていた。
こういう人が、今更「羊をめぐる冒険」を読みふけって、いったいどういう感想を抱くんだろうなぁ?と僕は思った。
僕は子供のころに村上春樹が結構好きで、当時出ていた本をほとんどすべて読んでしまった。
だから、僕の中で、春樹の小説の主人公たちは、みんな、「自分よりもずっと年上のかっこいい大人の人たち」なのだ。
今、僕は、「羊をめぐる冒険」の主人公とたぶん変わらないような年齢になっている(それとももしかしたら、「ダンス・ダンス・ダンス」の主人公ぐらいの年齢!?)けれど、それでも僕の中では、以前彼らは、「ずっと年上のかっこいい大人たち」だ。
物語の時間は氷漬けにされているので、僕が子供のころに読んだ印象のまま、ずっと変わらない。
それどころか、僕は、あんなにもかっこいい大人じゃない。
何ともみじめな、少年時代の延長線上に位置する大人なので、「30歳ぐらいのかっこいい大人」は、ずっと幻のまま、この世界に存在しない存在だ。
石原慎太郎的に表現すれば、そんな大人は、非実在中年なわけだ。

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