はっとり浩之オフィシャルブログ

2014年2月18日

広島、わが愛

カテゴリー: 未分類 — hattori @ 1:23 AM

山田洋二監督の新作で、主演(?)の女の子が賞を取ったみたいですね。去年、神戸が舞台ということで「シャニダールの花」を見たんですが、その時の演技も光っていて、心に残っていました。「小さなおうち」に関しては、妙にセット臭すぎる背景芸術とか、陳腐っぽすぎる演技とかが、広告の時点でも異様な雰囲気を醸し出していて、「これは相当変な作品じゃなかろうか」と思っていたので、評価されてうれしい限りです。
しかし、それ以上に驚いたのが、新聞の映画祭受賞作品一覧にひっそりと挙がっていた『監督 アラン・レネ』の名前!
生きてたのか! というか、今でも新作を撮っていたのか!
皆さん、アラン・レネって知ってます? その昔、「去年マリエンバートで」とか「24時間の情事」とかを撮った監督なんですけどね。僕は結構好きでした。
「24時間の情事」は、「広島・モン・アムール」が正確なタイトルで、一部の人の間では、「広島、わが愛」と呼ばれています。ブライアン・フェリーの歌にもなった傑作です(ブライアン・フェリーはトウキョウ・ジョーという歌も作っていますね。こちらも、ボギーと早川雪舟が共演したアメリカ映画のタイトルの借用です)。

ついでに映画の話を続けておこう。
先日の休みの日に、まとめて3作品映画館で見てきました。「オンリー・ゴッド」「アイマス」「エレ二の帰郷」。
一日にまとめて3作も見たのは久しぶりです。去年、七芸で友人と「ローズマリーの赤ちゃん」「選挙2」「コンプライアンス」の3本立てで見ようとしたのですが、途中でしんどくなって、「コンプライアンス」は見ずに帰りました。まぁ、重量級ばっかのラインナップだしな……。

「オンリー・ゴッド」は、「ドライブ」の監督の最新作。「ドライブ」がものすごく好きなので期待して見に行ったのですが、ものすごいはずしようでびっくりしました。
評価すべきか、しないべきか悩む映画です。
まぁ、よく言われているように、ディビッド・リンチの映画みたいな映画です。
といっても、ストーリー的には起承転結があるので、不条理ではないんですけどね。
気になったのは、
・やたらとおしゃれな建物を移すので、現実感が乏しい
・登場人物みんな無表情なので、何を考えているかわからない
・フラッシュバックっぽいイメージ映像があいだ間に挟まれるけど、これがいかにも映画サークルの学生がゴダールとかにかぶれてやりそうで痛々しい
・殺陣がやたらとちょろい
って感じ。
まぁ、ギャグ映画やね。

「アイマス」。
予想外にきっちりと作ってあった。普通に良作。
ポイントは、
・わりと汗を流せば何とかなる系のマッチョ志向だね
・脚本・高橋龍也と書いてあるだけで「あぁ、頑張ってはるなぁ」とわれわれの世代の人はみんな思うはず
・リーダーなんていらないって団結で言ってたじゃん、って労働者の皆さん一致団結しましょうねなんてゆうても今日はお客さん若い人ばかりやから意味が分からんかBy岡林信康
入場者プレゼントは沖縄&双子でした。

「エレ二の帰郷」
これ、おすすめ!アンゲロプロス監督の最終作。びっくりしたけど、この映画の次の映画の「もう一つの海」の撮影中にバイクにひかれて死んじゃったんだね。若松監督と同じような死に方だな。
どんな状況だったんだろう。
監督:おぃ、違うだろ、二カメ、もっと右、右にパンして! 違うって。俺のほうに来い、こっち、こっちのほうにもっと、そうそう!
言いながら右側の車道へはみ出す監督
スタッフ:あ、監督、バイクが
監督:へ? 
突っ込んでくるバイク
監督:ぶべらっ!!?
監督の体が吹っ飛ぶ
みたいな状況だったのだろうか。

まぁ、映画自体は、なんというか、70年代~80年代の匂いを濃厚にまとっていて、凄まじいです。今時、新作としてこういうのを見れるとは、って感じ。「こうのとり、たちすさんで」のころから変わっていないようにすら感じる。
とにかく、見ていて思ったのは、タルコフスキー監督の映画「鏡」と「ノスタルジア」を合体させたような感じだなぁ、ということ。ここに強烈にはみ出してくるのは、「郷愁」「センチメント」「あきらめ」「あがき」。万感の思いがはみ出しているという表現がぴったり。
で、この手の監督に顕著な特徴だと僕が思っている、「なんでもない日常を超常現象っぽく撮影する」場面のオンパレード! ごちそう様、堪能させていただきました。
あとは、
・若いころのスピロス、かっこいい! 常に帽子で、顔は映らない。ハードボイルド!
・娘とのいざこざは陳腐なのでいらないなぁと思ってみていたけど、最後の手をつないで走るシーンを見ると、人物造形の彫を深くしておいたってことで納得できた
・1950年代の描写がうまい。こう、昔の、フィルムで撮った映画の味わいがうまく出ている
・ヨーロッパ人の大陸感がよく出ている。ロシアから西欧までがヨーロッパ人の範囲なんだなぁと実感。もしも、日本人がこれと同じ映画を日本に置き換えて描いたら、日本人は、アジア全土を舞台にこういったスケールの映画を撮ることができるだろうか。
・ベルリンの風景が、中の島周辺に見えてしょうがなかったよ
って感じかな。

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