トム・ウェイツの「ダウンタウントレイン」が妙に聴きたくなった。
電車で乗り合わせた女生徒にドキドキする小汚いおっさんの歌である。
変な歌だが、ときめきがあるのはいいことだ。
※
先日、仕事で移動時間がなくて、しょうがないのでタクシーに乗った。
タクシーの運ちゃんがやたらとしゃべる人で、べらべらと思い出話を語る。
バブルのころは楽しかった、というような趣旨。
降りるとき、「お客さんは、おとなしい優しい人ですね」と急に言われる。
「そうですか」と答えたが、内心では、「10分ほど乗り合わせただけで他人の心の中を見透かしたような気分になるなよ」と思った。
その運ちゃんには、何かつらいことがあったのかもしれない。
若者に語りたかったのかもしれない。
しかし、黙って聞いてただけで、おとなしい男だと勝手に判断されるのはちょっと困る。
黙っている人は、おとなしいのだろうか? 優しいのだろうか?
そんなことはないと思う。
無口でも、心の中い熱い炎を持っている人は、たくさんいる。
それが表に出ないからといって、その人は、おとなしいわけでも、冷たいわけでもないはずだ。
僕は、「口には出さないけれど、いろんなことをいつも考えている」友人を知っている。
無口だけれど、熱い魂を持っている男も知っている。
だから、僕は、口に出さない人が、何もしない人だとは思わないのだ。
その逆もしかり。
口でおべんちゃらを言っても、心の中は氷のように冷たい人もいる。
表に出てアピールばかりしても、見えないところの仕事は何もしない人だっている。
「人を見た目で判断したくない」=「人を、自分の見えている角度からだけで判断したくない」が、僕の、基本理念だ。
※
学生時代、関西のフォークバンド、ザ・ディラン・セカンドの「男らしいってわかるかい」という歌に深く感銘を受けた。
『男らしいって、分かるかい?
ピエロや臆病者のことさ
俺には聞こえるんだ、彼らの
おし殺した叫び声が』