昨日の夜、斉藤和義がテレビに出てたんやな。
気が付かんかった。
ビデオ撮っといたらよかった。
普段テレビを見ないから、情報が入ってこんわ。
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恵美須町にあった音楽喫茶バロックが閉店してしまった。
学生時代は足しげく通ったのだが。
中古レコードを買いに行ったら、必ずと言っていいほど立ち寄っていた。
缶入りピースを吸いながら焼き飯を炒める店主がいい味を出してた。
真空管アンプでロックやジャズをかけてる店だった(店名に反してバロック音楽はあまりかからなかった)。
70年代前半に活躍した大阪のフォークバンド、ザ・ディラン・セカンドのメンバーが一時期バイトをしていたこともある、歴史ある喫茶店でもあった。
洋楽しか聴かなかった僕が、日本のフォークに興味を持ったきっかけがこの店だった。
散らかっているわけではないのだが、どことなく埃かぶったような薄暗い雰囲気の店だった。
僕は、昔、中古レコード店巡りを友人のSとしていて、二人でこの店にふらりと入って、アン・バートンのレコードがかかっていて、すっかり魅了されて常連になったのだった。
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バロックだけでなく、梅田にあって足しげく通っていた一杯飲み屋のハイボール倶楽部も移転してしまった。
一杯350円で飲めて、いつもビートルズが流れていて、気やすい雰囲気が心地よかった。
カウンターテーブル中心で、気負いなく飲める店だった。
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なんだか、昭和的な雰囲気の店が次々と消えていくような気がする。
危機感を感じ、つぶれる前に行かなくちゃと思って、しばらくご無沙汰だった、梅田の第二ビルの地下二階にある喫茶店ジャマイカに行く。
使い古した椅子の上に乗せられた、汚れた座布団。
そこに腰かければ、こう、穴に沈んでいくような心地よさがある。
店の中にいくつもの空気のよどみやくぼみがあって、まるでパズルのピースのように、自分がそのくぼみの中に当てはまっていくような感じだ。
高級な雰囲気の店や、流行してにぎわっている店、ポストモダンな建築の店では、感じ得ない心地よさだ。
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友人がギターを買いに行くからついてきてくれというので、心斎橋の三木楽器に一緒に行って、俺はハーモニカをやりたい、と思って、ハーモニカを買ってきた(もう、数週間以上前だけど)。
夕暮れに、大樹にもたれてハーモニカを吹きたい。
さびれた港で、出てゆく船を見ながら、ハーモニカを吹きたい。
そんなことを考えていると、昔、誰かの本で読んだ、夕暮れに肉体労働をしていたロシア人捕虜たちの話を思い出した。
たぶん戦時中だろうと思うのだが、ロシア人捕虜たちが、半裸姿で肉体労働をしているところをフェンス越しに主人公は見ている。
悲しい響きのロシア民謡。
その肉体の、きらきらと輝く金色の体毛に、思わず見とれてしまう。
日本は負けるかもしれない、と思う。
戦後。
同じように、悲しい、だがどこか深く心に食い込んでくる音楽を、復興中のざわめきの中で聞く。
セントルイス・ブルースだった。
ここまで書いて、思い出したが、たぶん、開高健の自伝的小説「耳の物語」だろう。
お話は、ベトナム戦争中、戦地で聴いたショパンのソナタへと続いていく。