はっとり浩之オフィシャルブログ

2011年5月17日

オーヴェルージュ

カテゴリー: 未分類 — hattori @ 1:33 AM

雑記。

先日、内田裕也の事を書いたけど、捕まってもーとるやん!

内田裕也の都知事選のときの演説はすごかったけど、もうひとつ演説(?)で忘れられないのが、昔、聴きに行った、仲井戸麗市の、磔磔でのコンサートのときのトーク。

ギターを弾く手を止めて、「ビートルズは、流行ってなんかいなかったんだ!」と彼が急に言ったとき、僕は妙な真摯さを感じた。

結局のところ、彼が言いたかったのは、自分は、ぜんぜん流行っていないビートルズを聴いていた、ビートルズですらそうだから、ストーンズやキンクスになると、もう名前ぐらいしか伝わってこなかった、それが今、TVは「60年代には日本でビートルズが流行っていた」みたいに嘯く、そのことが変だ。

そういうことだった。

それを、急に、ライブの途中に言って、何を伝えたかったのか、僕にはよくわからない。

でも、わかるかわからないかなんて、問題じゃなかった。

そこには、妙な純粋さがあった。

時々思うのだけど、本筋じゃない部分が肥大してしまうのが、僕は割りと好きだ。

犬の研究書を読んでいたら、急に不思議なソーセージの記述が出てきて、そのソーセージにまつわる大冒険譚になっちゃう、なんてのが結構好きだ(どんな本だろう)。

きっと僕は、断片を、個別として捉えているのだろう。

伏流が本流に回収されることに必然性をあまり感じない。

仲井戸麗市といえば、もうひとつ、僕がよく覚えていることがある。

それは、彼がものすごく薄汚い服装をしてステージに立ったことだ。

Tシャツ一枚にジーンズという格好で、しかもそのTシャツはよれよれで、首回りがもう伸びきってしまっていた。

ミュージシャンというよりも、浮浪者か金のない学生みたいに見たものだ。

少年時代の僕はそのことが気になって仕方がなくて(だって、派手なイメージの名前とぜんぜん逆じゃん)、「なんで、あんなにだらしない格好をしてるだろうね?」と、隣にいた、僕をコンサートに誘った友人に問いかけた。

すると友人は「そりゃ、ロック音楽をやってるからだろ。ピカピカの服なんて着たらロックじゃないやん」と答えた。

僕は、妙にその回答に感心したものだ。

あ、そっか。

ロックってのは反体制だから、観客にウケるようなきれいな格好をしちゃいけないんだ、と思った。

なんつー汚い格好だ、オーラの欠片もねーな、と僕は思ったけど、それは僕の間違いだったのだ。

彼は、とてもロックスターに見えない格好をすることで、音楽を、舞台という高い位置から引き摺り下ろそうとしているのか、と思ったのだ。

僕は妙に納得して、「あ、そっか。ロックってのは反抗だから、おしゃれなカッコウなんてしちゃいけないんだ!」と思ったのだ。

今考えれば、僕もまだまだ子供で、思い込みの激しい時期だった。

でも、そのときに感じたことは、形をかえつつも、今でも僕の思想信条の中心地に鎮座している。

ロックは逆説でなければならない。

カウンターカルチャーでなければならない。

媚びちゃいけないんだ。

流行の服装をしたら駄目なんだ。

服装だけじゃない。

精神の問題なんだ。

常に、流行や美しいものと対立しなきゃならない。

自分が、体制側に立っちゃうとだめなんだ。

常に、ブルーカラーで、ワーキングクラスでなきゃならないんだ。

僕は別に仲井戸麗市のファンじゃない(古井戸もRCも結構好きだけど)。

僕は、仲井戸麗市というよりも、「ロックは、きれいな格好をしちゃいけないんだ」と教えてくれた友人の言葉に、深く感心したのだ。

労働者階級の音楽でなけりゃならない、ワイルドでタフでなきゃならない、と、そう思ったのだ。

考えてみれば、僕は、高校生ぐらいの頃から、ずっと、髪を研いだことがない。

それも、やっぱり、「きれいな格好をしたくない」という想いが根底にあるからなのだなぁ。

でも一方で、クラフトワークもデイビッド・ボウイも好きなんだよ。

それは、クラフトワークの着ている背広も、デイビッド・ボウイの化粧も、オシャレではなく、逆説のためなのだと、感じるからだろう。

あと、とにかくブルースだって言ってりゃ格好良いって考え方も嫌いなんだよ。

それはそれで、安易過ぎてさ。

ダークでブルーな方向を常に選択しときゃ格好いいってのは、それはそれで、ひとつの体制になっちまっている。

ルーチンワークになっちまっている。

それじゃ駄目なんだ。

常に裏切り続けよう。

その精神が大事なんだ(だからやっぱディランは格好良いんだよな)。

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