はっとり浩之オフィシャルブログ

2011年4月14日

そこにいないということで、存在をしてる

カテゴリー: 未分類 — hattori @ 9:28 AM

そこにいないということで
目隠しをして
だけれども
部屋の片隅に
座っているおとこ
夜が
真空管のラジオから
トラッドフォークを
紡ぎだし
おとこの耳を
慰める

まるで孤独と
病院に
二人っきりで入院をしてるよう
顔の形を忘れてしまい
のっぺらぼうに見えてた妻が
みかんの皮をむいている
心の皮も
おんなじように
むいてくれたらと
思っている

そこにはいないという
ことが
川のように流れてる
国会議事堂の
レプリカが
自宅の机の上においてある
作りかけの模型には
どこか
寂しいところがあるね
真空管は
同情をして
りぃーん
りぃーんと
共鳴しそう

おとこが
存在をする方法は
いくつもの本に書かれてる
ありきたりな説法が
定型文に
にじんでる
おとこのことを
愛していた家族たちは
かわりばんこに座ってる
古びたいすの
ビニール革が
人間の体温を
見比べている


30歳を過ぎた
おとこの息子が
パソコンを一つ持ってきた
パソコンのフォルダの中の
おとこの動画
むかし撮ったビデオから
MPEG2に変換されている
25年前のおとこの
顔が
家族を前に
笑ってる
学芸会の
小さな講堂
みんな楽しそうに
笑ってる
でもふるいビデオだったので
おとこの顔は
いまにも
消えてしまいそう
ビデオの中の
おとこの顔が
真っ白で見えなくなったとき
本当におとこの存在は
そこにあることになるだろう

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