はっとり浩之オフィシャルブログ

2011年4月12日

拡大された世界では

カテゴリー: 未分類 — hattori @ 9:58 AM

拡大された世界では

夜を見るのも大変で

小さな闇の粒子の中に

朝の光が迷ってしまう

からころ下駄の音を鳴らして

温泉街でも歩いているよう

世界はこんなに広がったのに

町は軒並み一回り縮んでしまった

縮んでしまった小さな町が

さびしい気持ちに同意している

縮小された世界から

君が空席のままやってくる

君は初めからいなかったのだが

君という空席は

ちゃんとそこにある

空席が空席のままの列車が

レールをきしませ

この町を過ぎ去った

過ぎ去った跡に開いた花は

少しふしぎな色模様

君がそんな風にして

やってきたとき

僕はガード下で

たたずんでいた

僕には君が

見えなかったし

君は

僕を見ることが出来ない

君の空席は

拡張をはじめ

やがて君は広い空白になる

君でさえ

そうなってしまった

君でさえ

そうなるのだと

嘆く声が

また新しい空席の

列車を送り

同じように

空白だけが広がる

きしまされたレールだけが

訳知り顔で

微笑んでいる

拡大された世界では

夜を見るのも大変で

小さな闇の粒子の中に

朝の光が迷ってしまう

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