電車に載っていたら、女子大生か女子高生かの二人組みが、隣に座って、延々とバイト先の先輩の悪口を言っていた。
その悪口の理由が、「化粧が濃くてキモい」。
なんだか、切なくなってきた。
そのおばさんさぁ、化粧濃いかも知れないけど、その人なりに精一杯頑張っている結果なのかもしれないやん。
もしかしたら、職場で好印象なように、考えた結果の化粧かも知れないし。
君たちだって、年取ったら、必死で化粧しなくちゃならなくなるかもしれないんだぜ?
僕も、ずっと若い頃は、もっと感性が鋭くって、いろんな物事に怒ってた。
美しくない物事が許せない頃があった。
でも、その美しい美しくないって、いろんな状況や理由を抜きにしちゃった美しさなんだよね。
若さ特有の、鋭すぎる感性なんだ。
歳を取ってきて、僕は感性が鈍っちゃったけど、鋭い感性じゃなくても、いろんなことをちゃんと語れるんだってこともわかってきたし、いろんな事情や理由が世の中に存在するってことも、わかってきたんだ。
誰かが言ってたけど、人にはそれぞれ事情がある、ってことを、理解できてきたんだ。
若い二人の鋭い感性を、僕は否定しない。
若い頃、鋭くなかったら、どうすりゃいいんだ。
でも、君たちが思うよりももっと、歳を取るって、へヴィーだぜ、とも思ったな。
しかし、その場で、君たちに向かって、そのことを、言わずに、ここにエッセイ風に書き綴る僕も、卑怯者のおじさんなんだ。
※
Y新聞社から、電話がかかってきて、「失礼ですが、プロの脚本家だってんですか?」と問われる。
本当に失礼だな(笑)。
ぜんぜん不快じゃないけどね。
ちゃんと毎月15万もらって書いてましたよ。
小さな制作会社ってのは、大変なもんです。
寮にはガスすら入っていなかったし、忙しい時期には、一つの部屋に4人ぐらいが泊まるんですね。
僕は新参なので、よく廊下で寝てた。
今考えると、もうちょっとしがみついとくや良かったかなぁ。
去年、「オペラ探偵ミルキーホームズ」ってアニメやってたけど、あのキャラデザって、僕と同期の友人なんだよね。
「いやー、負けちゃったなぁ」って気分でいっぱいです。
とはいえ、古い友人がそういうふうにメジャーデビュー(?)するってのは、格別にうれしいもので。
今度、DVDでも買ってやろう。(笑)
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友部正人の「誰も僕の絵をかけないだろう」を久々に聴く。
言葉が胸にびんびんと響いてくる。
やっぱフォークはすごいわ。
フォークといえば、「左」というイメージがあるけど、僕は、むしろ「右」だと思うんだよね。
だってフォーク歌手って、絶対に英語を使わないじゃん。
日本語で、言語で、勝負してるでしょ。
本気で国のこと考えて、主張してるでしょ。
すげー愛国的じゃん。
最近の、口先かっこつけ愛国者よりも、よっぽどイかしてるよ。
それにしても、この作品、言葉がすべて寂しいな。
深い失望感にとらわれている。
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その後、ボブ・ディランの「ブロンド・オン・ブロンド」を聴く。
ポストカードに描かれた絵みたいに、ディランの真相は、事実は、向こう側にあって、見えない。
僕たちは、いつも、断片のような複製画を、眺めてる。