昨日書いたこととも、繋がってくるんだけど、僕が日ごろ、今の日本の一番の問題だと思うことは、「訊きたいことが訊けない」「当たり前のことが訊けない」ということだ。
「どうしてなの?」「それをそうすることで、僕たちは具体的にどうなるの?」「それは、誰にメリットがあって、誰にデメリットがある行為なの?」そういう、根本的な問題が訊きにくくなっていて、どうでもいいような、枝葉の部分への知識ばかりが大量に提示される。
あるいは、本質をはぐらかし、「こうしなさい」と、答えらしきものだけ提示する人々もいる。
だが、「そうすると、僕たちはどうなるの?」と、尋ねることは、なかなか出来ない。
ずっと昔、ピカソの展示会に行ったときに、晩年のピカソが、「子供の心で」と語っているドキュメンタリーのようなものに接して、深く胸打たれた。
子供は、アカデミズムも、プライドもわからず、何でも尋ねる場合がある。
それが出来ないのが大人だ。
しかし、アカデミズムなコレクトアンサーや、プライドに邪魔されて、本当に本質が見えていないのは、大人かもしれない。
少なくとも、僕には、世の中のことで、たくさんの、知らないこと、よくわからないこと、訊きたいことがある。
僕は、かなり本を読むほうだと思うが、いくら本を読んでも、すべての問題に即座に答えを得られるなんてことはない。
むしろ、本を読んでも読んでも、遠回りする道ばかりが示されることだって多々ある。
しかし、少なくとも、無批判に「こうしなさい」「こうするべきだ「」という、理由を語らないマジックワードが何かの折に出てきたら、その言説には絶対に注意するべきである。
それは、誰にとって、絶対にして欲しいことなのか。
それを考えるべきだろう。
※
話は変わる。
D&Gが、日本から撤退するそうな。
新聞に書いてあった。
これは、結構大きな事件だな、と僕は思う。
僕はD&Gに興味はないし、D&Gで服を買ったこともたぶん一度もないけれど、D&Gを身につけている人々は、よく見る。
あれだけ影響力のあるブランドが、おもむろに消え去る場合、それは、どのような結果を、この国にもたらすのだろうか。
D&Gを好んでいた若者たちのファッションは、「D&Gに似た何かに代返される」のか「まったく違うテイストの嗜好に移行する」のか。
また、あれだけたくさんの、D&Gの従業員たちと、国内向けデザインのデザイナーたちは、どこへ行くのか。
服飾は、文化に影響を与え、文化は、心理に影響を与える。
はてさて、どういう結果が出るだろうか。