はっとり浩之オフィシャルブログ

2012年5月23日

おかしな質問/人にはいろんな事情がある

カテゴリー: 未分類 — hattori @ 11:22 PM

フジテレビから電話調査がかかってきた。

ほら、たまに新聞とか番組とかがやってる「ランダムに選出した人に電話をかけて質問するアレ」である。

政治意識調査だったので、「本当にフジテレビかよ、うさんくせーな」と思いつつちゃんと答えてみた。

総選挙の時期はいつぐらいがいいと思うか、とか、地域酋長の人気ぶりをどう思うかとか、次の首相にはだれがいいかとか、およそ20項目にわたって質問された。

そのなかで、噴飯ものの質問が一つあった。

「野田首相の人となりをどう思いますか?」という質問である。

人となり?

あまりにも馬鹿げたことを訊くので、一瞬頭が真っ白になった。

たびたび書いているが、私は民主党政権を支持しない。

自民党政権の末期(小泉以降)もひどかったが、民主党政権は、それと同じぐらいにひどい。

しかし、私が民主党政権を支持しないのは、いくつかの政策の方向性にたいして怒りを覚えるからである。

政治というのは、「どういう政策を決定するのか」が大事であって、「良い人そうだから」支持するものではないはずだ。

そもそも、である。

学校の学級委員長を決めるのではないのである。

「あなたは野田総理の人柄をどう思いますか?」と問いかけられた人々は、野田総理と実際に会ったことがある人たちなのだろうか?

よく想像してほしいのだが、「我々国民のほとんどは、野田総理と直接会ったことがない」のである。

人柄などというものは、よほど長く付き合ってみなければ見えてこないものである。

だからこそ、初めは熱く燃え上がった恋人たちが、しばらく顔と顔を突き合わせて付き合っていくと、相手の中身を知って幻滅したりするのだ。

人となりとは、「顔を突き合わせて共同生活をして」はじめて深く理解できるものである。

たった一日さえも顔を合わせたことすらない野田首相の人となりについてどう評価するか質問されても困る。

私は困り果てて、「テレビや新聞でしか見かけたことのない人の人間性など知る由もないので答えられません」と答えた。

もしも、この質問で、「私はね、野田さんはねぇ、〇〇だと思うよ」などと答える人がいるとしたら、その人は相当無責任な人である。

クラスの学級委員長は、人柄で選んでもいいと思う。

毎日同じクラスで顔を突き合わせているのだから、「こいつはわがままばっかり言ってるな」とか「こいつは人の悪口ばっかり言ってる」とか「こいつはさぼり癖があるぞ」とか、相手の中身は見えている。

それにそもそも、学級委員長程度ならば、仮に就任したところで、そうたいした権力でもないので、悪いことをしようとしてもたかが知れている。

しかし、である。

相手は国会議員で首相である。

日本の最高権力者の一人である。

適当な判断をしたら、どんな悪いことをされてしまうかわからないのである。

我々は、慎重に判断をせねばならない。

が、材料が不足しすぎなのである。

私たちは、首相として選ばれる候補者の誰一人とも、お茶の間のテレビ越し以外で出会う機会を有していないのである。

私たちは、彼らの人柄を、判断できないのである。

私はいつも思う。

そりゃ本当は、人柄でえらべりゃそれにこしたことはないぞ。

だが、残念ながら俺たちは、あいつらと、テレビといういくらでも演出できるメディア越しにしかご対面できていないんだぞ、と。

一階の演説会、一回の握手会、一回のバラエティ番組、一回のニュース番組。

そんなもので、「出会った」としても、「相手の人柄なんてわかりっこない」のである。

人には、いろんな隠された本性があり、いろんな隠された事情があるのである。

松本清張の「砂の器」なんて、まさに「人にはいろんな事情がある」ドラマだった。

僕は子供のころ、この作品の映画版を見て「へぇ、大人になると、いろんな、口に出せない事情ができてくるんだなぁ。言えなくて、人から誤解されることもあるんだなぁ。つらいなぁ」と思ったものだった。

それ以来、「よく知りもしないのに、他人の表面だけを見て批判するのはやめにしよう」と心に決めたものだった(実行できているかどうかは自信がないけれど)。

実際、僕の古い友達でも、よく観察すれば、いろんな事情や本性を持っている。

一見付き合いが悪いと思っていたら介護の必要のある父親が家にいるので忙しくて他人と付き合っていられないという理由があった人。

いつも無口だから何を考えているのかわからないと思っていたが、本当はものすごい知識人で、ただ単に口下手だから口に出さないだけの人。

正義感ぶって格好をつけているけど、本当は正義の味方に見られている自分に酔っているだけの人。

世の中にはいろんな人がいる。

そしてそういうのは、長く付き合ってみなくちゃわからない。

テレビ越しに見たって絶対にわからない。

みなさん、首相のひととなりを知る方法をおしえてくれませんか?

2件のコメント

  1. はっとり先生、初めて書き込みさせていただきます。

    着眼点が面白いですね。

    首相の人となりを知る方法は、首相の側近になって共に生活や会話をしていくしかないですよね。

    ほんと、マスコミは馬鹿げた質問ですね。

    視聴率が稼げたらいいのでしょう。

    マスメディアの本質が、我々の期待しているところからかけ離れている為、何を観ても面白くありません。

    我々の声って本当にどこにも届きません。

    守口市でも、常にそう感じます。

    服部先生、頑張って下さいね!!!

    コメント by 守口門真JCOB — 2012年5月29日 @ 11:29 AM

  2. ありがとうございます。
    僕は高校2年生の時に、テレビが壊れてから、ほぼテレビを見ないという生活を今まで送っています。
    映画が好きなので、映画を見るためにテレビとDVDの再生装置を持っていますが、借りたり買った作品を見るためであって、放送されているものを見るためではありません。
    テレビを見ていると考えが偏ってしまうとかそういう確固たる思想があるわけではなく、ただ単に、テレビ番組がつまらなさすぎるから見ないだけです。
    まれに、他人がテレビを見ているのを横目で見ると、普段テレビを見ない分、なおさら「ここがおかしいなぁ」という部分が目につきます。
    新聞も雑誌も、なんだかつまらない論調になったなぁと思うことが多いです。
    大学時代に政治の研究をしていたので、それぞれの新聞の差異を知るために昔から、喫茶店に行ったりしてできるだけ4紙全部読むように心がけていますが、ことさら震災以降は、なんだか臭いものにふたをしておためごかしの平和や絆を語っているような論調に腹が立ちます。
    何でもかんでも経済や合理性ばかりをもてはやす傾向も馬鹿らしいと思います。
    一方で、僕はラジオもあまり聞かないのですが、せめてラジオだけはアナーキズムというか、世間の流行と全然違うことでも平気で言える気風を守ってほしいなぁと思っています。
    ロックンロールの黎明期から、ラジオは反体制であるはずですから(と、一方的に信じています)。

    コメント by hattori — 2012年5月29日 @ 11:50 PM

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